忘れ物

この時期、朝、会社に向かう途中はラジオ体操を横目に歩いている。スタンプを押してもらうかシールを貼ってもらうカードは21世紀になっても健在らしく、ひも通して首からぶら下げている小学生がばたばた歩いている。友達同士でチャリンコで来てる子もいるみたい。

私が歩いている側の向かいのマンションの玄関から四年生か五年生くらいお姉ちゃんと、一年か二年くらいの妹の姉妹が出てきた。歩き出してからすぐにお姉ちゃんが妹がカードを持ってないことに気づく。
「あんた、カードは?」
えっ、と固まってしまう妹。
お姉ちゃんは妹の面度みるのが面倒くさくなって
「取ってきぃ、知らんで、もぉ」
と言い放って、すたすたと先に足を進める。
妹はその場にたたずんで、ちょっと考えてから、きびすを返して玄関に走り入った。
お姉ちゃんは5、6歩進んだところで振り返って“しゃぁーないなぁ”って思いながらも玄関の手前まで戻っていった。

どこにでもありがちな一瞬だったんだけど、とてつもなく落ち込んでいる自分が居た。私にも2つ下に妹がいて兄妹だっただけど、私の方は割と何でもできる子で、妹はできない子だった。低学年の頃はできるできないなんて気にならないし、兄妹であることのほうが重かったんだろうけど、自分が高学年になってくるとできない妹を“恥”ととらえてしまうようになってきた。妹が特別学級に行くことも、関わりたくない一心だったと思う。たぶんいろんな場面で、戸惑っている、困っている妹を見てたのに、助けを求めていたんだろうに、ずっと見て見ぬふりしていたと思う。
兄妹ってほんと二人しかいないのに何が“恥”なんだ。かばってやれなかった守ってやれなかったくせに、未だえらそうに生きている自分がまだここにいるのが何なんだろうと思う。

朝、目の前の1分くらいの出来事で、ちょっと思い出してどんよりした金曜日。